異なる小学校の複式学級同士によるICTを用いた遠隔合同授業が児童の気分に与える影響の検証
技術教育コース・科学技術教育コースの福谷遼太講師,保健体育教育コースの矢野宏光教授,幼児教育コースの玉瀬友美教授らの研究グループ
【概要】
 本研究では,本学部・附属小学校・高知県教育センターの3者による共同研究として,複式学級同士によるICTを活用した遠隔合同授業が児童の気分に与える影響を検証しました。
 高知県は,県土面積において過疎地域を含む中山間地域の割合が約93%であることから,複式学級が多く設置されています。複式学級は,構成人数が少ない上に,異なる学年の学習者が同じ環境で学ぶ構造上,授業で児童生徒が多様な考えを出し合って練り上げていくことや,学習者の学習意欲を維持させることに課題があるとされています。このような課題に対し,遠隔会議システムを用いて他校と繋ぐ「遠隔合同授業」は,複式学級の構成人数の少なさを補える点で効果的であると考えられます。しかしながら,その研究事例は十分に蓄積されていないことに加え,遠隔合同授業が児童の気分にどのような影響をもたらすかについては明らかにされていませんでした。
 そこで本研究では,附属小学校が高知県内の2校(A校・B校)とそれぞれ2回ずつ,計4回の国語科の合同授業を行い,そのうち3回は遠隔会議システムを用いた遠隔授業,1回は対面授業として実施した上で,それぞれの授業前後における児童の気分の変容を調査しました。合同授業では,児童が有するタブレットPCや大型ディスプレイ(電子黒板)を使用して接続した上で,ロイロノート(Loilo社)を用いた資料共有や,Zoom(Zoom Communications Inc.)のブレイクアウトルームを用いたグループ活動等を実施しました。
 児童の気分の変容を調べるために,小学生以下の子供でも回答しやすい検査「こころのダイアグラム(DMS)-二次元気分尺度(TDMS)子ども用-」を使用して分析した結果,遠隔授業でも児童の気分が有意に向上し,多くの児童が授業を肯定的に捉え,自分の考えを普段より積極的に表現できたと感じていることが示されました。質問紙調査における自由記述でも,「また交流したいと思った」「自身にはない考えが勉強になった」といった趣旨の意見が複数見られ,児童たちが遠隔合同授業という授業形態であっても建設的に学ぶことができていたことが分かりました。一方,音声トラブルなど通信環境が気分に影響することも示唆されました。
【今後の波及効果】
 前述の通り,児童数の少ない複式学級では,多様な意見の交流や学習意欲の維持に課題があるとされています。複式学級が多い高知県において,他校との遠隔合同授業がその課題解決の一助となる可能性を示した点は意義深い成果といえます。
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市町村ごとの学校における教育の情報化の実態等調査結果 主要項目についての経年変化