朝日町】教育DXで未来を切り拓く「小さな町」の「大きな挑戦」
人口1万人の小さな町、富山県朝日町が、教育DXの先進地域として注目を集めている。生成AI活用や授業改善、教員の働き方改革など、次々と取り組みを進めてきた背景には、教育長の確かな信念と、町を挙げたスピード感ある改革の姿があった。 リーディングDXスクールや生成AIパイロット校に指定  富山湾と立山連峰に挟まれた自然豊かな町、富山県朝日町。人口約1万人、小学校2校と中学校1校を有するこの小さな町が、教育分野において全国に先駆けた取り組みを次々と打ち出している。  2019年には県内で初めて学習者用デジタル教科書を導入、2020年のコロナ禍では県内初となる双方向のオンライン授業を実施するなど、教育DXを進めてきた。その後も取り組みは加速を続け、文部科学省の「リーディングDXスクール」事業(令和5年度~)、「生成AIパイロット校」(令和6年度)、「AIの活用による英語教育強化事業」(令和7年度~)に、それぞれ指定された。これら3つの指定を受けている自治体は全国的にも珍しい。  「スピード感を大事にしている」と語るのは、朝日町教育委員会の木村博明教育長だ。国の動きを見ながら、先に先にと取り組むことを心がけてきた。  転機となったのは、2020年のコロナ禍だった。全国的にオンライン授業の必要性が叫ばれる中、木村教育長は「都会の学校は進んでいるだろうから、オンライン授業もすぐに始められるのだろう」と漠然と考えていたという。しかし、実際にはそうはならなかった。「ならば、うちでやってみよう」と、朝日町はすぐに動き出した。動画配信式ではなく、リアルタイムで子供と教員がやりとりする「双方向」授業を実現した。この経験が、町にとって大きな自信につながった。  「地方だからできないわけではない。やる気さえあれば地方でもできる。むしろ小さな町だからこそ、素早く動ける。教育DXによって、子供たちの学びをより良いものへと変革するチャンスだ」と捉えるようになったと、木村教育長は振り返る。 主体的・対話的で深い学びの実現が教育DXの目的  1人1台端末の活用はもちろん、生成AIの活用も積極的に進めるなど、教育DX先進地域として全国的に注目を集める朝日町だが、その根幹にあるのは「子供一人一人を主語とした、主体的・対話的で深い学び」の実現であることを、特記しておきたい。「朝日町授業力改善プラン」(※図1参照)でも、主体的・対話的で深い学びを実現し、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ることが主目的であり、その手段として端末や生成AIを活用していくと明記されている。  「ICTの導入によって、一人一人の子供の理解度や進度に合わせた、個に応じた学びが可能となった。未来の学びを実現していきたい」と、木村教育長は意気込む。  そのため教育DXを進めるだけでなく、自由進度学習や複線型授業といった新たな指導方法の導入による授業改善や、探究的な学びの推進も一体的に進めている。  情報活用能力の系統的な育成にも、力を入れている。朝日町では、小学校1年生から中学校3年生までの9年間を見通したカリキュラムを作成し、段階的に育てるべきスキルを明確化(※図2参照)。情報の収集、整理・分析といった「探究」の基本的な技能に加え、プログラミングや情報モラル、生成AIとの関わり方も盛り込まれているのが特徴だ。これによって子供たちは、主体的・対話的で深い学びを進める手段として、ICTを活用できるようになってきている。 生成AIがもう一人の先生となり個別最適な学びを支援する  生成AIも、子供たちは個別最適な学びを主体的に進める手段として活用している。朝日町では、令和6年度に富山大学、つくば市、大手通信会社と連携し、人型ロボットとChatGPTを接続した1対1の英会話システムを採用。子供が  AIの発話スピードや声の高さなどを自ら調整しながら、主体的に学習できる環境を整えた。教員やALTだけでは、個々の子供に十分な会話練習の時間を確保するのが難しい。生成AIを導入することで、生徒一人一人のレベルや課題に応じた、個別最適な練習環境を実現したのだ。  生徒からも好評で、「生成AI相手なら恥ずかしがらずに話せる」「仲間のように楽しくやりとりできる」といった声が寄せられており、教員からも「一人に一人の先生がついてくれるような感覚」と、学習効果と負担軽減の両立を実感する声があがっている。そして令和7年度からは、文部科学省の英語教育強化事業の指定を受けて、富山大学との連携のもとで新たに生成AIの活用を進めている。  生成AIは社会や国語、理科、体育など他の教科でも用いられているが、生成AIを「調べ学習のパートナー」や「提案者」として活用しているのが特徴だ。  例えば、理科の授業では「この現象を解明するためには、どんな実験をしたらよいか」といった課題に対し、生成AIからアイディアを得て検討を進めている。体育では、バスケットボールの練習メニューやゾーンディフェンスの戦略を生成AIにアドバイスしてもらうなど、子供たちは主体的に学ぶ時の手助けとして、生成AIを活用している。  朝日中学校の川田彰校長先生は  「生成AIは、子供一人一人につきっきりで指導してくれる、もう一人の先生」と語る。個別最適な学びを生成AIが支援しているのだ。 子供たちの学びを広げ、深める産官学連携  主体的・対話的で深い学びを進めるために、朝日町は産官学連携にも積極的だ。前出の生成AI活用でも産官学連携しているが、象徴的な取り組みが、「朝日町未来創造DXプロジェクト」だ。これは朝日町とDX協定している大手広告代理店である(株)博報堂とが連携して進めている社会起業家教育であり、小中学校の総合的な学習の時間を活用して展開されている探究的な学習だ。  子供たちは、地域にある「困りごと」を自ら発見し、グループで解決プランを立案し、プレゼンテーションを行う。その際、各グループには、大手広告代理店本社の社員が一人ずつオンラインで参加し、子供たちの学びをサポートする。またメタバースも活用し、仮想空間の中で自分が考えたまちづくりを具現化しているという。  「学校教育のDXが進む今、この大きな変化に学校だけで対応するのは難しい。企業が持つさまざまな知見を、教育に取り入れたいと考えています」と、木村教育長は語る。外部の力を借りることで、子供たちの学びを広げ、深めようとしているのだ。  朝日町では学習者用デジタル教科書の活用も進んでいるが、その結果生まれたのが「らくらく登校」だ。これは学習者用デジタル教科書が入った端末を持ち帰る代わりに、紙の教科書は学校に置いて帰ってもよいという取り組みで、小中学校すべての学年で実施されている。ランドセルが軽くなったと、子供や保護者、そして教員からも好評だ。紙の教科書を持ち帰るかどうかの判断は子供一人一人に任されており、ここでも学習者としての主体性を育もうとしている。 部活動改革も進め 教員の負担を軽減  先生方が子供たちの支援に力を注げるように、朝日町は教員の働き方改革にも力を入れている。校務のDX化を進め、職員会議のペーパーレス化や配布物のクラウド化などを導入。業務負担の軽減が着実に進んでいる。  生成AIも、授業に導入する前から校務での活用を進めてきた。例えば、教員が各種文書を作成する際や学校行事の構想を立てる際に、生成AIに「たたき台」を出してもらい、それを参考にして業務を効率化している。  四月朔日安輝子指導主事も、担任を務めていた令和6年度には、生成AIを活用して授業づくりを行っていたという。  「個別最適な学びを進めるには、どんな授業構成にすればいいのか。子供にとって必要感があり、効果的な活用となる場面はどこかについて考えました」  働き方改革の一環として国に先駆け休日・平日の部活動改革も進めている。朝日中学校では、柔道やバスケットボール、吹奏楽など10種ある部活動を競技ごとに地域のクラブや競技協会と連携。地域コミュニティクラブの活動へと地域展開している。技術的な指導は外部の専門家に委ね、教員は事務的なサポートを行うようになってきている。  「専門家の指導を受けられるので、教員の負担軽減だけでなく、生徒の競技力向上にもつながっている」と、川田校長先生はいう。  外部への委託を段階的に進めているのも、うまくいっている理由だ。まず週1日の委託から始め、現在は週3日を外部に委託。来年度は週5日を目指している。また、柔道部においては、来年度に向けての試行として週5日を地域コミュニティクラブで実施するなど、できるところから少しずつ進めることで、地域が受け入れ体制を整えやすいようにしている。  かつては軟式野球部の監督として熱心に部活動を指導していたという川田校長先生は、「これだけ社会が変化しているのだから、学校教育も変わらなければならない」と、笑顔で語ってくれた。 小さな町の大きな挑戦 教育DXが拓く未来  教育DXを推進してきた木村博明教育長だが、実は自身はICTが得意なわけではないという。  「ICTで教育が変わる」と聞いても、当初は半信半疑だった。しかし先進校を視察して、子供たちが端末を自在に使いこなしながら主体的に学ぶ姿を目の当たりにした時、その考えは一変した。  「環境さえ整えてあげれば、子供は大人の想像以上の力を発揮し、主体的に学ぶようになる。これは私たちに突きつけられた挑戦状だと感じました」  以降、木村教育長は教育DXを通じて「子供たちの未来」を切り拓く挑戦を続けてきた。小さな町だからこそ、決断から実行まで素早く一丸となって動ける強みを活かし、全力で走ってきた。  「子供が『学びたい!』とわくわくできる教育を実現したい。そして、朝日町に誇りと愛着を持ちながら、世界に羽ばたいていってほしい。“小さな町の大きな挑戦”は、これからも続いていきます」  (木村教育長)

砺波市】砺波南部小学校 2日間のタブレット教室を通して(4年生)
 4年生は、2日間ICT教育の講師の方をお招きして、グーグルスライドやスプレットシート等について学びました。スプレットシートを使ってグラフや表を作成する時間には、操作方法を教えていただきながら自分の力で気温の変化を折れ線グラフで表しました。グラフを作ることができたときには、「お~」「すごい!」などの声がたくさん聞かれ、自分の力が高まったことを実感できたようでした。グーグルスライドを使って教室を紹介するスライドを作る時間には、今まで使っていたタブレットとの写真の撮り方やスライドの進め方の違いを確認しました。子供たちは、社会や総合の時間、係活動で使えそうだと考えていました。 たくさんのことを教えていただきありがとうございました。学んだことをこれからの学習に生かしていきたいと思います。

砺波市】出町中学校2年生 国語科 「問題提起の答えの根拠は?説明文『モアイは語る』」
こちらも2年生の国語科の授業の様子です。説明文『モアイは語る』を活用し、「問題提起の答えの根拠は?」を学習課題として学習を進めていました。この授業では、新しいタブレット端末を操作しながらの授業でした。

氷見市】高校生がデジタル無人販売所運営で地域を活性化~学科横断・地域連携の実践的な学び~
富山県教育委員会は、DXハイスクールの氷見高等学校職業系4学科で学科横断型の講座などを実施するため公募型プロポーザルを7月31日に公示。 デジタル無人販売所の運営を通じて、生徒のDXへの理解と関心を高める。販売プロセスのデジタル化やマーケティング、Webページ制作、SNS広告運用などを含む講座を年間40〜50回程度実施。情報Ⅱの内容も取り入れ、教員向け研修も行う。

富山市】大沢野中学校 プログラミング授業の様子
大沢野中学校では、富山(富山大学・富山県・富山市)ICT・DS教育支援事業モデル校の指定を受け、この9月に技術・家庭科技術分野のプログラミングの授業を、富山大学と連携して1年生で実施しています。今日はその発表の日だったのですが、生徒は緊張することなく、各自が作成・工夫した計測・制御のプログラムをみんなの前で堂々と発表することができました。

富山市】芝園小学校 「自立した学び」の実現に向けて ~「芝園スタイル」の実践から~
「主体性のある子どもの育成」を目指して 富山市では「主体性のある子どもの育成」を目指し、問題解決的な学習(PBL)に取り組んできた(*1)。令和3年度には1人1台端末が導入され、学習に時間的、空間的な制限等がなくなった。このことにより、子供の学習の自由裁量、協働の機会を増やし、その範囲も拡大させることができるようになった。それは、授業の構造を変革することを可能にした。 伝統的に取り組んできた「問題解決的な学習(PBL)」に「端末(ICT)のよさ」を掛け合わせ、本校では令和3年度より新しい授業のスタイル「芝園スタイル(PBL×ICT)」に着手し、研究を進めている。 「芝園スタイル」とは、子供一人一人が課題をもち、その課題を自らの力で解決していく複線型の授業(図及び動画を参照)であり、この学習によって「『個別最適な学び』と『協働的な学び』の一体的な充実」の実現につながっている。 また、今回の端末導入で、「クラウド活用」により「共同編集機能」を使用できるようになった。この機能が本校の子供一人一人の自立した学びのために不可欠な存在となっている。 クラウド活用による「芝園スタイル」の活性化  「芝園スタイル」では、子供に「何を(学習課題)、どのように(学習過程)、誰と(学習形態)」学ぶのかを委ね、子供がそれらを自己決定し、自らの学びをつくっている。自立した学びを可能にするためには、課題が明確であることや課題解決への見通しがあること等が大切であることは自明である。また、考えが独りよがりにならないように、そして考えの深化・発展のためにも仲間との議論等をする場、いわゆる協働が必要である。これらを子供自身が自らの判断で進めていけるように、必要な情報を提供できるのが「共同編集機能」(ただし共同編集機能には、同期的な両方向の活用と片方向「他者参照」の活用がある)である。本校では、教師が育てたい資質・能力や子供の実態、教科等の本質や特性を見極め、複数の「共同編集機能」を組み合わせることで、子供が自己決定していくことができる環境を整えている。本稿では、とりわけ「他者参照」に絞り活用例を紹介する。 (1)学習過程や振り返りの記録・蓄積・共有 自分の学習状況をメタ認知したり、目的に応じて学習形態や協働する相手を決めたりすることができるように表計算ソフト(*2)に確認する項目を入れて使っている。 また、自身の課題や活動内容、振り返り、次の課題を明確にして、見通しをもって追究できるようにするために、「振り返りシート(*3、*4)」にもこのソフトを使っている。この「振り返りシート」は、教師にとっても個に応じた支援を明確にするため重要な情報源となっている。 (2)一人一人の学びの「見える化」 子供が追究を停滞させず頭をフル回転することができるように、一人一人の子供の追究の方向性に合わせ、教師は提供する情報を多様に準備している。この情報の一つとして「他者参照」の機能(文書作成、描画、電子ホワイトボード等)を生かしている。 学習課題や関心のあるテーマを一覧(*5)にしたり、仲間の考えや成果物等(*6)をいつでも他者参照できるようにしたりしている。時には、白紙の段階から共有し(*7)、また、チャット機能(*8)も取り入れるなど、目的に応じた工夫をしている。 このような活用によって、全員がアウトプットの機会を得ることができ、教師も仲間も互いに誰がどのような考えをもっているのかを把握でき、理解し合うことができる。そして、今まで気付かなかった仲間の考えの素晴らしさに出合うことができる。 子供の「自立した学び」を追い求めて このような学習の成立には、学び方を継続的に指導することや子供に「自ら学ぶ」という意識を日頃から醸成していくことが重要である。そして、子供が共に学ぶ仲間と協力したり切磋琢磨したりすることで、よりよい学びを全員で創っていくことのよさを実感できる経験を蓄積していくことも大切である。 休み時間に校舎を巡回していると、子供がホワイトボードの前で議論している姿を見かけることがある。子供は「芝園スタイル」で学び、自ら学ぼうと成長してきている。今後も、子供の自立した学びを支え、一人一人の自己実現のため、全教職員が一丸となって努力していきたい。

富山市】富山市教育センター GIGA推進リーダー研修会(中学校)
 9月5日(金)上滝中学校で、GIGA推進リーダー研修会(中学校)を開催しました。 2年生音楽科、3年生数学科の2つの授業が公開されました。 講師の中京大学 泰山裕先生より、本日の授業とつなげながらクラウドを活用した授業改善について、演習も交えながら具体的に教えていただきました。 受講者からは「子供たちが協働的に学んだり、個で学んだりできるように『課題』や『場面』を考えていきたい」「学びのゴール、到達目標を生徒と共有することは非常に大切だと思った」「学び方の指導を繰り返し行い定着させることで、教科としての学習の深まりも進むことが分かった」などの感想が聞かれました。 研修会での学びを生かして、授業改善につながるクラウド活用が一層推進することを期待しています。

富山市】宮野小学校 5年生 台風15号
台風15号の進路図からたくさんの疑問をもった子供たち。「台風の仕組み」「台風の進路」等、たくさん調べて、よく考えました。

富山市】岩瀬中学校 2年生 授業の様子
2年生の授業の様子です。2-1 家庭科2-2 保健体育2-3 理科2-4 数学

富山市】岩瀬中学校 1・3年生 THE談会
1年生と3年生の学年生徒会メンバーが集まって、THE談会を行いました。1年生のお悩みや、3年生が1年生のときどうだったのかなど、いろんなことをお話ししました。これから行われる体育大会や合唱コンクールについても、いろんな質問が出ましたよ。これからも、たくさん意見交換していきましょう!!

【富山県】