【交流会レポート】「GIGA端末ってなぜ持ち帰り運用にしないの?」―安心して子どもたちに使わせられるように―(令和3年3月10日(水)開催、資料・録画データ公開)

GIGAスクール構想推進委員会・学校支援部会・交流会サブ部会セミナーは3月10日(水)に開催され、柏市教育委員会アドバイザーの西田光昭様にファシリテートいただき、先進自治体として、つくば市教育委員会の中村めぐみ様、奈良市教育委員会の谷正友様、新潟市教育委員会の片山敏郎様をお招きし、GIGA端末の持ち帰り運用についての取り組みをお話しいただきました。また、後半では視聴者からの質問に回答する形で情報交換、意見交換をしていただきました。

※2021年4月7日更新:登壇者の皆様のご厚意により、当日の資料がダウンロードできます。先進自治体より各自治体の状況についてにダウンロードリンクを記載しています。

目次

  1. ファシリテーターより趣旨の説明
    ファシリテーター:柏市教育委員会 西田光昭氏
  2. 先進自治体より各自治体の状況について
    登壇者:
     ・新潟市教育委員会 片山敏郎氏
     ・つくば市教育委員会 中村めぐみ氏
     ・奈良市教育委員会 谷正友氏
  3. 情報交換・意見交換
  4. ファシリテーターによるまとめ
  5. 録画データ

先進自治体より各自治体の状況について

新潟市教育委員会 片山敏郎氏(iOSを採用)

※当日の資料のダウンロードはこちらから。

授業づくりの一環として、家庭学習も「授業の延長線上」であるとしてシームレスに持ち帰りができることが大事と考えている。持ち帰りの活用事例を集約して紹介していくことで、活用をさらに促進していきたい。

昨年8月くらいの段階で持ち帰りを前提とした保護者向けのPR活動、またガイドラインを提示してきた。最終的に持ち帰りについては学校(校長)判断としている。

「GIGA宣言」をし、各家庭(保護者)との連携を促し、学童保育でもWi-Fi整備やルーターの貸出によるサポートなどの支援をし、持ち帰り前提への理解や協力を求めていく。

新潟市GIGA宣言

つくば市教育委員会 中村めぐみ氏(Windows OSを採用)

※当日の資料のダウンロードはこちらから。

持ち帰り学習を促進することで、「シームレス教育」(“いつでもどこでもどんなときでも学びを止めない”)を目指す。

学校以外のどんな場面であっても「学びたい」という意欲を阻害しないためにも、学びを制限されてしまうようなことはしない。受験期の時にもオンラインとオフラインのハイブリッドで実施することができた。

持ち帰りに対する課題を洗い出して、対応を定めた。また、紛失や故障:対応をフロー化、要項・ルールを策定。
・Wi-Fi環境:W-Fiルーターの支援、将来的には家庭で整備してもらえるよう啓発
・セキュリティ:OS設定による保護と夜間のインターネット使用制限
・情報モラル:情報モラル教育をカリキュラム化
・端末設定:持ち帰りの手引き、Wi-Fi接続マニュアル、持ち帰り用のACアダプターの提供

つくば市シームレス教育

奈良市教育委員会 谷正友 氏(Chromebookを採用)

※当日の資料のダウンロードはこちらから。

令和2年4月よりオンライン授業の取り組みをスタート、令和2年10月からGIGA端末の持ち帰り運用を開始した。

何のために配布されたか?持ち帰りするのか?これをしっかりと保護者に伝えることが重要。学校としてどう向き合うか?メッセージを伝えることを各学校へはお願いをした。教育委員会だけでなく、両者でメッセージを出すことを大切にしている。

コロナ禍で臨時休業期間中に実施した学習支援での課題や経験値を活かすことができた。日常的な利用を推進することで、万が一の事態にも対応し得ると考える。加えて全員がGIGAスクール端末を使うので、全体でノウハウを共有できる。

  • 奈良県域で「先生応援プログラム」を実施
  • 運用ルールについて保護者に確認書の形で同意
  • ケーブルは1台につき2個用意
  • コールセンターの設置(サポーター予算)
  • 故障:保険処理
奈良市のGIGAスクール構想

情報交換・意見交換

Q:持ち帰りは、文科省からの提言では緊急時への対応を想定していたが、GIGAの目的からすると平常時からやるべきでは?
片山:最初から持ち帰り前提としてやってきている。
中村:シームレスな学びをすることを考えている。
谷:始まったときから議論、コロナで後押しされて日常的に反転学習など多岐に活用。

Q:どこまで持たせていいのか?例えば塾で使ってもいいのか?
谷:教育委員会では制限していない。
中村:ルールの中で多少の条件付けはしているが、基本はどこでも使えるように。
片山:方向性は同じ。

Q:持ち帰り時のアプリの使用制限はしているか?
谷:AIドリル等を入れている、ロイロノートスクールを採用。
中村:学習支援システムを使ってデジタルノートを作る、共有する、M365、プログラミング。
片山:ロイロノート、ドリルパーク他、推奨のアプリカタログを提供(自由に選択できる)。

Q:故障(保守)の範囲、どんな線引きができる?
谷:一概に線引きが難しい、明らかな故意の場合は保護者負担の明記が必要。
中村:故意かどうかの切り分けが難しい、紛失は管理不行届として対応。
片山:準備はなかなか難しい、詳細な聞き取りをして対応、これから検討必要。

Q:低学年でも持ち帰りさせていますか?
中村:学年問わず。
片山:学年問わずの方針は出しているが、現在は学校(校長)判断。低学年は時期尚早との声がまだ多く、これからの課題。
谷:学年問わず。ただ、“荷物重たい”問題あるので、低学年は持ち帰りの曜日を決めるなどしている。

Q:家庭の方で自宅のPCを使うので持ち帰り不要という声があるか?
片山:一部である。粘り強く説得していく。
中村:自宅にあるものを使いたいというのは目指すべき姿(将来的なBYODに向けて)。
谷:ネガティブな理由はほぼない。自宅にPCがあるので不要というのは一部。将来的にはBYODも議論されるべきだが、今は同じ端末で、というのをお願いしている。

Q:持ち帰りに対して自治体間の情報発信・共有は?
中村:問い合わせは多く、全て共有している。ホームページにも手引き等を掲載している。
片山:ホームページで共有している。Facebookグループも活用。
谷:県内では共同で密な連携をしている。県の研究所に他の都道府県からの打診は多い。視察や資料提供は120件くらい対応している。ホームページとTwitterで情報発信。
西田:GIGA HUB WEBも大きな役割があると思う。

ファシリテーターによるまとめ

端末の持ち帰り運用は本来のGIGAスクール構想のあるべき姿。
学校の学びの延長としてGIGA端末を積極的に活用すべき。
不安に答える準備と、それを保護者へも提示・共有し、将来のあるべき姿を示す。

録画データ