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予算獲得や体制構築の課題──ICT支援員を持続可能な形で確保するには? 鹿児島市・柏市の好事例に見る
教育委員会の予算のことがわかる!【ICT支援員 × 教育委員会】ICT支援を長期継続させる戦略セミナー「ICT支援員を確保し続ける方法、他自治体の成功例から学ぶ120分」レポート
GIGAスクール構想によって1人1台端末の整備が進んだ現在、「ICT支援員」の役割が改めて重要視されている一方で、予算獲得や体制構築に苦戦する自治体もあるという。どうすればICT支援員が単なる業務代行者ではなく、教育委員会や学校、企業と連携しながら、子どもたちの学びを支える「共創のパートナー」になれるのか。合同会社かんがえるが主催し、ICT教育を牽引してきた鹿児島県鹿児島市の木田博氏、千葉県柏市の西田光昭氏を招き、具体的な実践と工夫、そして制度設計について話を聞くセミナーが5月31日に開催された。本稿で詳しくレポートする。
【鹿児島県鹿児島市】ヘルプデスクを活用したワンストップ対応で、フレキシブルなICT支援を実現
ICT支援員への期待が高まる中、その役割や業務形態、力量などについて、どう捉えてどう可視化するか、悩みつつ手探りで対応している自治体は少なくない。そうした中、人口約58万人、小学校78校・中学校39校・高校3校を擁する鹿児島市では、ICT支援員が有効に機能しているという。
木田博氏は同市の学校ICT推進センターの所長などを務め、現在は教育委員会で教育DX担当部長として、学校ICT推進センターや学校のみならず、市立図書館や給食センターといった教育委員会の組織を横断し、14の課におけるデジタル領域事業を所管する。
木田氏は「組織横断は非常に重要だと考えている。教育DX担当部長に就任し、各課が重複したデータを持っており、調査も重複して実施していることが判明した。調査が減れば教員の負担が減り、データを有効に活用できる。そこで、まずは教育委員会でデータを共有・共通化することから始めている」と語る。
なお鹿児島市では、GIGAスクール構想 第2期に向けて学習者用端末の約8割を今夏に更新する予定で、新しい機器やシステムが導入されれば教員への研修が必要となり、そのレクチャー役をICT支援員が担うこととなる。
文部科学省の「令和7年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」では、ICT支援体制として、ICT支援員を4校に1人配置することに加えて、教育センターなどへの「ヘルプデスク」の設置が期待されている。現在、鹿児島市のICT支援員は、市が会計年度任用職員として直接雇用した4人で、120校を抱える自治体としては少ないものの、先述のヘルプデスクの機能を強化している。
同市におけるICT支援員の主な業務は、学校ICT推進センターのヘルプデスクとして1日100件ほどの対応を行うほか、操作研修の講師、授業の支援、端末や機器のメンテナンス、コンテンツや操作マニュアルの作成などを担当する。業務に必要な機器類は教育委員会側で準備し、予算は学校ICT推進センターの運営経費として計上している。勤務時間は6時間45分の2シフト制で、学校への移動には公用車を使用する。
ヘルプデスクに問い合わせがあると、まずICT支援員が対応し、遠隔操作ツールで問題解決を行う。そして、情報教育推進に関することなど、内容によっては指導主事が対応し、高度な技術的トラブルは教育委員会に常駐するシステムエンジニアが対応するといったように、ワンストップで対応している。
学校からの問い合わせにワンストップで対応
学校からの問い合わせにワンストップで対応
遠隔での操作支援には「SKYSEA Client View」を活用し、学校にいる教員と同じ画面を見ながら操作支援や機器トラブルに対応する。木田氏は「電話のみでの対応は大変難しい。また、支援員が直接操作して対応することも可能だが、できれば教員が自分で解決できるように伴走することを意識している」と語った。
遠隔での操作支援
遠隔での操作支援
さらに、トラブルの原因の把握・特定を迅速化するためにオープンソースの「Zabbix」を導入。監視ログを活用することで、障害発生のタイミングや原因を特定しやすくなるという。例えば、各学校でトラブルや異常があればアラートとして通知され、トラブル発生中の学校が地図上に示される。さらにネットワークエラーの箇所もシステム図で可視化されるため、トラブルの原因を速やかに特定できる。
ネットワークの常時監視システム ネットワークの常時監視システム
ネットワークの常時監視システム
こうした遠隔・監視システムにより、これまでは現場に出向き、対応に半日かかっていたトラブルの約半数が、電話を受けてから5分ほどで解決できるようになった。さらに、フルノシステムズの「UNIFAS」によるネットワーク監視システムを導入し、アクセスポイントの管理も行っている。
このように人員こそ少ない鹿児島市のICT支援体制だが、教員の満足度は全国平均よりも高く、ヘルプデスクの利活用が功を奏しているという。
木田氏は最後に、ICT支援員の事業継続や新規予算確保に向けたポイントを解説。「教員が楽になる」「子どもたちがICTをどんどん使う」といったように情に訴えるよりも、文科省の「令和5年度 ICT支援員の配置状況」や「学校のICT環境整備3か年計画(2025~2027年度)」「全国学力・学習状況調査」の質問紙調査の結果、デジタル庁の「校務DXの取組に関するダッシュボード」など、エビデンスや根拠を示すと説得力が増すことを説明した。加えて「現場の要望や支援希望のポイントなどの『声』を示すことも効果的」と強調した。
鹿児島実業高等学校 端末交付式(1年生)
6月9日(月)、1年生向けに「端末交付式」を実施しました。本校では、文理科と普通科の生徒に「iPad」を、総合学科の生徒に「Chromebook」を導入しており、授業での活用はもちろんのこと、朝と放課後の自学自習、総合的な探究の時間や課外活動におけるプレゼンや動画作成、ホームルームにおけるアンケートや各種資料の電子化など、学校生活の多くの場面で端末を活用しています。
まず初めに校内使用規程の注意事項を確認し、それから様々なアプリケーションへの初期ログインを行いました。今後1週間は初期設定作業や、保護フィルム、ケース等の準備期間となり、6月16日(月)から本格運用となります。生徒たちもこれからが楽しみな様子でした。
福平小学校 親子でタブレットの正しい使い方の学習
1年生(全学級)は授業参観で、①~③(①写真、動画を撮る②ロイロノートで問題を解いて、提出する③学びポケットにログインして、デジタルドリル【ナビマ】に挑戦)を通して、タブレットの正しい使い方を親子で学習しました。
福平小では、個別最適な学びや協働的な学びのために、タブレットの日常的な活用をすすめています。
鹿児島玉龍高等学校 リーディングDXスクール事業【実践事例】
クラウド型の教育ICTサービスを利用して課題の配信・自主的な学習の取り組みを促進している。生徒は自分のペースで配信された問題を解いたり動画を視聴したりして学習を進めることで、個別最適な学びの充実につながっている。また、教師は生徒の取り組み状況を把握することで、生徒一人一人の学習がどこまで進んでいるかが分かり、指導の個別化に役立てている。
MEIALUA、鹿児島情報高校で実践型クリエイティブ教育を開講
MEIALUAは7日、鹿児島情報高校と連携し、同校マルチメディア科3年生(デザイン基礎受講者)を対象とした1年間のクリエイティブ実践講義を2025年度4月から開講したことを発表した。
(左)鹿児島情報高等学校 校長 新納武彦氏、(右)MEIALUA 代表取締役 入江凌生氏
AIの普及や急速に進化するデジタルツールの登場により、デザインや映像、イラストなどの表現活動は、かつてよりもずっと身近なものになった。スマホやタブレット一台で作品を制作し、SNSで自由に発信することが当たり前となった今、若い世代の創造力にはこれまでにない可能性が広がっている。
クリエイティブ分野に関心を持つ高校生は年々増えており、「将来は“好き”を仕事にしたい」という声も多くなっている一方で、「どうすれば仕事につながるのか」、「どんな進路を選べば良いのか」といったキャリア設計の企画の考え方、アイデアの伝え方、お金が動く仕組みなど、実際に社会で働く中で必要になる経験を、高校生のうちに体験できる機会は地方では限られている。
たとえ数は多くなくとも、こうした切実な声を真摯に受け止めた教員たちは、“高校の学びでできること”を改めて問い直し、今回の取り組みに至ったという。
MEIALUAは、福岡を拠点に活動するアーティストカンパニー。同講義では、生徒たちがリアルなクリエイティブの現場やそこに至るまでの思考プロセスに触れることで、進路の“その先”にある「職業としてのクリエイティブ」を具体的にイメージできるよう設計しているという。
学校における教育の情報化の実態等調査結果 主要項目についての経年変化
【鹿児島市】の詳細な情報は基礎自治体教育ICT指数サーチ(岐阜聖徳学園大学 芳賀研究室提供)へ