岐阜県下呂市は教員の働き方改革のため、4月から市内の全6中学校で下校時刻を原則、午後4時半としている。これまで放課後の午後6時ごろまで部活動を行っていたが、授業時間を充てて週2回とし、終了時間も早めた。実施から約1カ月。全国的に見ても先駆的な取り組みとみられるが、教職員に余裕が生まれたほか、生徒は時間の有効活用につながるなど、効果が見え始めている。午後5時過ぎ。30分ほど前まで校内にいた生徒の姿はない。下呂中学校(下呂市森)では、午後4時半で部活や学級活動を終え、同45分までに下校することにしている。職員室などでは、教職員が生徒の様子などを和やかに語り合う姿が見られた。 中村好一校長によると、以前は教職員が仕事に追われ会話する余裕もないことが多かったといい、「授業をうまく進めるための情報交換や、新たな発想に取り組む時間ができた」。毎年4月は新学年の立ち上げや年間の計画作成などが集中する繁忙期で、以前は遅くまで残業する姿が常態化していたが、本年度は「午後8時にはまず帰れている。働く時間は確実に短くなっている」と効果を語る。下呂市では、市校長会が2021年度から下校時間の前倒しを議論してきた。市域が広くバスで通学する生徒も多いが、下呂、萩原南、萩原北の3校が利用するコミュニティーバス「げろバス」も、4月からは午後4時半の下校に合わせたダイヤに統一。市を挙げて取り組みを支援する。生徒への好影響もあるという。中村校長は「生徒たちに時間を有効に使ってもらいたいという願いがあった」と狙いを強調。時間にゆとりができたことで「創造や発想をする余裕が出ている」と語る。国のGIGAスクール構想で導入され、新型コロナウイルス感染拡大に伴うリモート授業などにも役立ったタブレット端末を活用し、下校後の学習や意見交換に活用しているほか、部活動でも自主練習の方法を教員に尋ねたり、熱心に研究したりする生徒もいるという。部活動は、6限授業を週2回、5限にして時間をつくって実施。授業時間数を減らさないように、学校行事の準備などを見直して工夫している。コロナ禍で行事を見直しながら授業時間数を確保してきたノウハウが、下校時間の前倒しでも生きているという。細田芳充教育長は「教員の働き方改革で、いい動きが起こせた。生徒も自分の生活を自分でつくりあげる機会。自身で考え、有効活用してほしい」と期待する。