教育委員会訪問企画第6弾!~春日井市教育委員会 児島教育長を訪問~

先進的に教育施策を推進されておられる自治体を訪問し、現状の取組や教育にかける思い等についてお話を伺い全国の皆様にお届けしております。今回は、春日井市教育委員会 児島教育長を訪ねてまいりました。

春日井市は「みんなで育み、みんなが輝く」という基本理念のもとICTの活用はもちろん様々な取組を推進されています。これまでの春日井市の取組を具体的なエピソードを交え伺うことができましたのでお伝えさせていただきます。


■取材日 2025年11月25日(火)

■対談者 春日井市教育委員会 教育長 児島 靖 様

■訪問者 学校支援部会交流会サブ部会長 富士通Japan株式会社 應田 博司


  1. 子どもの育成に向けたICT活用
  2. 子どもの安全安心な教育環境に関わって
  3. 学校と地域の連携
  4. 文化・スポーツに親しむ環境
  5. 今後の展望について

本日は、春日井市教育大綱を軸に春日井市の現状や課題認識等についていろいろとお話を伺えればと思います。

1. 子どもの育成に向けたICT活用

應田:ICTを有効活用しながら児童生徒にとって必要な資質能力を育成していくために様々な改革に取り組まれているかと思います。これまでの取組内容を中心にお聞かせください。

児島教育長:変化が激しく先行きが見えにくい社会において、その変化に柔軟に対応しながら自ら考え学び続ける子どもたちを育てていきたいと考えています。子どもたちが知識をいかに活用していくか、自律的に学びを深めていくか、コミュニケーション力を含め必要な資質能力をどのように育んでいくかということを大切にしています。

ICTの活用については、これまでの歩みを振り返ると25年前に、校務での活用を通して教員がまずはICTの活用に抵抗感を持たないようにしようということでスタートしました。15年前からは、授業での活用を研究するべく、出川小学校で研究した成果をもとに全校に実物投影機とスクリーン、教室にPCを配置し、取組を拡げていきました。そして、GIGAスクール構想が始まる前の今から10年ほど前から、児童生徒一人一台端末の活用を進めてきました。

そうした中、春日井市では情報活用能力を系統立てて育成すべく、令和4年度より研究開発学校において特別の教育課程「情報の時間」を新設し、研究・実践を取り組んでいます。情報活用能力は、子どもたちが自ら学びを深めるための基盤となる極めて重要な能力であると思います。

個別最適な学びや協働的な学び、あるいは探究的な学びにおいて、この能力が発揮されることで、「課題の設定・情報の収集・整理分析・まとめと表現」という一連の学習サイクルがより円滑に機能するようになると実感しています。また、情報活用能力の育成を通じ、子どもたちが自律的に学習に取り組む「学びに向かう力」も着実に育まれています。

今後はこれまでの研究成果を最大限に活用し、情報活用能力の育成を全市的に展開していきたいと考えているところです。

児島教育長

應田:子どもたちが学びを進め、深めていく中で自ら試行錯誤していくことが重要だと感じていますが、これまでの学校教育の中で失敗をさせない、失敗を恐れてしまう傾向があるように感じています。

児島教育長:確かにそういう傾向にありましたね。今は少し変わってきましたが、今の時代に合わせた子どもたちに合った教育をしていかなければといけないと思います。失敗を恐れず情報をたくさん知り、自分なりに考え伝えていく、そのためには試行錯誤していけることが大切ですね。これまで子どもたちに主体的に学ばせているようで、決められた枠組みの中で学ばせてきたかもしれません。子どもたちが本当の意味で自ら学んでいけるよう学校教育も変わっていかなければならないと思います。

2.子どもの安全安心な教育環境に関わって

應田:子どもたちの安全安心な環境づくりということで、特にいじめや不登校、虐待などについては、全国的にも深刻な課題であると認識しております。このあたりに関わっては何か取組はされていますか。

児島教育長:不登校については春日井市では、子どもたちの居場所の一つになればとの思いで、登校支援室を全中学校に設置しています。コンセプトは「ヒュッテ」。デンマーク語で居心地の良い空間という言葉で、日本語の「ほっこり」「まったり」に近いニュアンスの言葉です。子どもたちが、ほんわか温かい空間の中で安心できる居場所づくりを進めています。

また、本市では以前より教育支援センターでの支援をはじめ、さまざまな支援を実施しています。子どもにとっての居場所づくりという観点でいろんな場所を用意することが、多様性の観点でも必要だと感じています。

應田:家庭環境、人間関係、低学力など、不登校に関わって個々の子どもがもつ背景は多様です。おっしゃる通り、いろんな居場所を作ることはとても大切だと感じました。一方、子どもに日常的に関わる先生方は、つい自分で抱え込んでしまうようなケースもあると聞いています。子どもを支援していくためには、子どもを取り巻く関係者がうまく情報共有し合いながら必要な支援を進めていくことも大切かと感じています。そうした仕組みがあることで先生方も一人で抱えず、関係者みんなで子どもを支援していく体制がつくられていくのではと思います。そのあたりは、ICTの出番があるかと思います。

児島教育長:そうですね。児童生徒が今日の気持ちを入力するアプリもある中、日常的に入力していくことで、変化を捉えることができる。そこに支援が生まれる。うまくICTを活用しながら、子どもの変化をとらえ、組織的な支援につなげる取り組みを進められたらと考えています。

3.学校と地域の連携

應田:子どもたちの育成に関わっては、地域との連携をはじめ、地域教育力の向上といった観点も重要になるかと考えています。そういった意味で、学校と地域との連携の観点でお話をお聞かせください。

児島教育長:春日井市では、学校を中心に地域全体でまとまる組織として「学校地域連携協議会」を設置して拡大しています。学校の支援活動はもちろん、地域全体の課題解決、多世代間の交流促進、子どもの居場所づくりなど様々なことに取り組んでおり、学校、PTA、自治会をはじめ地域に関係する多様な団体が参加いただいております。目的は学校支援だけでなく地域づくりもあります。地域コミュニティをつくっていき子どもをそこで育てる、地域の再生も見据えています。清掃活動やイベントなどもありますが、特徴的な取組では、高校生が先生役となり夏休みに子どもたちに勉強を教えるような取組も生まれています。今後も地域のつながりをうまく生み出しながら子どもの成長を支えていければと考えています。現在3地区で展開していますが、全市にどのように展開していくかが今後の課題です。

應田:地域のつながりを作っていくという点でも大切な取組ですね。

児島教育長:地域によって昔からの地域やニュータウンなど地域の背景や実態も様々ですので、地域の特性を踏まえつつうまく取組が広がっていけるようになるとよいと思います。

4.文化・スポーツに親しむ環境

應田:春日井市教育大綱を拝見しますと、子どもたちが多様な文化・スポーツに触れる機会を設けることが記載されていました。このあたりに関わって具体的にはどのようなことを進められていますか。

児島教育長:水泳の萩原智子さんを毎年招いて水泳大会を開催しています。また春日井市は剣道にも力を入れており、全国高等学校剣道選抜大会や大学生の全日本女子学生剣道優勝大会を開催しています。

文化的なことでは、春日井市は小野道風生誕の伝説があり、小野道風にちなんで書道展の全国大会を開いています。小中学生の大会、高校生の書道パフォーマンス大会がありますね。学校教育でも書道については、特別な教育課程として小学校1年生から全市で取り組んでいます。各学校には書道室があり、書家や教員OBが指導しています。他にも芸術家を派遣する「かすがい どこでも アート・ドア」という尺八や琴といった伝統音楽をはじめ様々な芸術に触れる事業を行っています。学校に訪問し、芸術家が授業をしたりしています。

他には各校が予算を活用して、トップレベルのスポーツ選手を招いてイベントをしたりもしています。

應田:様々な分野の本物に触れる機会がたくさんありますね。子どもたちが自分の好き!のきっかけをつかむことにもつながりそうだと感じました。

5.今後の展望

應田:いろいろな観点で興味あるお話をたくさん伺えました。それでは最後に、今後の展望等についてお聞かせください。

児島教育長:やはり子どもたちが自分で自律して学んでいけることがこれからの時代に大切だと感じています。自ら自分で学んでいける子どもたちを育てていきたいし、子どもたちが、誰一人取り残されない教育をしていきたい。そして、学びって楽しい!そう思える子どもたちをこれからも育成していきたいと考えています。

應田:貴重なお話をたくさんお聞かせいただきありがとうございました。今後の春日井市の教育の益々のご発展を祈念しております。本日は貴重な機会をいただきありがとうございました。