11月8日(火)に「学習者起点の実践アイデアをつくろう~飲食アルコール自由~」というテーマで交流会セミナーを開催しました。
交流サブ部会では、「学習者起点の学びの促進」というテーマで議論を重ねています。今回は、全5回中の第2回で、実践事例の共有と明日からできるアイデアを議論しました。当日は、学校教育関係者はもちろん民間事業者など多彩な方々に多くご参加いただけました。
○登壇者(実践事例の共有)
・「民間企業と連携した探究学習の指導法研修について」 後藤 裕介さん
・「Youtube, Scratch, micro:bit を用いた『中学校・技術科でのプログラミング学習』について」 高瀬 浩之さん
・「幸福の国デンマークの学びフォルケホイスコーレのご紹介」 鈴木 秀顕さん
○ファシリテーター
南房総市立富山中学校 野口 雄毅
社会デザイン協会/松蔭大学 鈴木 秀顕
松戸市立和名ケ谷中学校 高瀬 浩之
三鷹市立第七小学校 後藤 裕介
ICPF理事長、東洋大学名誉教授 山田 肇
交流会サブ部会長 富士通Japan 應田 博司
目次
(1)趣旨説明
(2)登壇者による実践事例の共有
(3)参加者による実践アイデアの議論
(4)まとめ
(5)最後に
(1)趣旨説明
令和の日本型学校教育の姿のひとつとして、個別最適な学びの実現があります。これは、「学習者起点の学び」の姿です。また、新学習指導要領の主体的な学びは、「学習者起点の学び」の一側面を持っています。この主体的な学びは、多くの学校で課題発見・解決学習やアクティブ・ラーニングとして事例を聞くようになりました。
8月末に実施した第1回セミナーでは、多くの方々の現場での子どもに対する取り組みや悩みを数多く共有でき、そして参加者の皆様の力強さを感じることがだきました。この力を現場で実践しようと企画です。学習者起点の事例を学び、事例をヒントに実践アイデアを出し、Cグループメンバーが教育現場で実践します。
(2)登壇者による実践事例の共有
●「民間企業と連携した探究学習の指導法研修について」 後藤 裕介さん
三鷹市教育委員会と株式会社探究学舎が連携し探究学習の指導方法の実践を踏まえて、学習することのほとんどが子どもにとっては「どうでもいいこと」を出発点ととらえている。学習者が知っていること等とのずれ(疑問)を想起させる教材(四択クイズ、グラフ、写真)を提示し、学習者が「考えてもいいかも」と思わせる工夫をし、「問いを育てる」指導を実践している。ずれ(疑問)を想起させる工夫は、授業のユニバーサルデザインを参考にしている。
●「Youtube, Scratch, micro:bit を用いた『中学校・技術科でのプログラミング学習』について」 高瀬 浩之さん
生徒の座席を、機械的に毎回変え、学習課題を、原則として班ごとに取り組ませ、教師は、最初の10分で「本日のやるべきことを」提示する。生徒は、GIGA端末を利用して、学習課題の確認、作業方法の確認、制作過程の写真撮影と投稿、各自の「ふりかえり」を、必ず毎時間実施する。生徒は、ものを作る、うまく作る、仲間に助けてもらうと、嬉しくなる。教師は、細かいことは言わずに目標を明確に示すことが大切である。
生徒は、「ここがわからない」と言えるか否か。また、不特定なメンバー(同じ班の人)に対して、「一緒にやろうよ」と言えるか否か。さらには、比較的うまい生徒が、うまいやり方を同じ班の人に教えることができるか否か。これらのことを、毎回、異なるメンバーでやりとりすることに意味がある。ふりかえりをたくさん書く生徒は、結果的に、内容も分析も「気づき」もレベルが高いことが多い。各学年でマイクロビットを学習する際に使用した動画などはYouTubeを利用している。
●「幸福の国デンマークの学びフォルケホイスコーレのご紹介」 鈴木 秀顕さん
フォルケホイスコーレとはデンマーク発祥の成人教育機関である。
【特徴】
「生徒のための学校」「17歳半以上であれば誰でも入学できる」「試験や成績がない」「寄宿制で教員と学生が共に暮らす」「対話中心の学び」である。学校ごとに特化している授業科目は異なっている、ほとんどの授業が選択授業、授業時間だけでなく、生活のあらゆる場面で他者とのかかわりがある
【学びの特徴】
暮らし全体を通して「自分は何者であるのか、何が好きで何をしたいのか」を明らかにしようとしている。「あなたはどう思う?どうしたい?」という対話から始まる。
【日本教育との違い】
自分の意見よりも、すでに存在する「正解」を知ることが求められる日本の教育である。個人の意見を尊重し、全員が納得できる最適解を競争することが求められるホイスコーレの教育である。
(3)参加者による実践アイデアの議論
>後藤 裕介さんの発表をもとに議論
学習者は、「どうでもいいこと」を出発点にし、教師の導入資料の提示の工夫で、学習者の問いを生む工夫は、学習者が自分事として学習課題に取り組むきっかけとなる。導入の工夫は、授業のユニバーサルデザインを参考にしており、多くのヒントがありそうである。
>高瀬 浩之さんの発表をもとに議論
座席を毎回変える授業は、多くの視点で学習に取り組めたり、生徒間の学び合いが活性化したりするなど学習者起点となる興味深い取り組みである。毎回、振り返りをすると学習内容の定着が図れるが、級友の振り返りも見ることができ、効果的な取り組みである。座席を毎回変えることは、おのずと生徒間の対話が生まれ、ホイスコーレの対話中心の対話が生まれる。
学習課題の確認や共有などGIGA端末を効果的に利用しており、GIGA端末がない黒板と紙のワークシートでは、毎回このような授業を実施することはできないであろう。
>鈴木 秀顕さんの発表をもとに議論
日本の学校教育は、正解を求め評価される。これにより、学習者の疑問がゴールに直結しないと意欲が減退される。また、正解を求め評価されると気づく学習者は否定的な意味で同調する。自律した個人の意見を大切にし、多様な他者との対話から一層、学習者の学ぶ意欲が育まれる。現場の教師がホイスコーレの学びを実践すべきである。
(4)まとめ
多くの議論から学習者起点の学びの実践ヒントとアイデアが生まれました。この実践ヒントとアイデアをCグループのメンバーが現場で実践をします。実践報告を12月22日(木)に行います。次回のセミナーもご期待ください。
参加者より
・セミナーで紹介いただいた事例は、「先生の立場で学習者起点とは○○○と考える」という学校の現場からの内容でした。「学習者起点の学び」とは何かを考える参考になりましたが、私は普段学校の現場に携わっておりませんので、やはり、「(児童生徒の声で)こんなことを学びたい/やりたい」という現場の声も聴きたかったです。
・今後もセミナーに参加いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
・学習者起点の授業の進め方について意見交換しましたが、興味深い内容でした。今後、この単元で実践したらこんな反響があった、こんな効果が出た、こんな失敗したというような話を聞かせてください
(5)最後に
ご登壇いただいた皆様、そしてご参加いただいた皆様のおかげで素晴らしい交流会セミナーとなりました。あらためまして感謝申し上げます。今後も皆様にとって実りある企画を実施していこうと思いますので、宜しくお願い致します。